10.メイドカフェ潜入

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「アキバをね?離れたくない訳じゃないの。寧ろ、一刻も早くこんな所…。」 俯きがちのせいか、睫毛が長くてフサフサなのが強調されて、彩希さんの白い頬はとても滑らかだった。 可愛い子だな… 容姿もなんだけど、こう言うちょっとした仕草が可愛い。 人気になるのもわかる気がする。 「…ここにいたら、やっぱり『クサ』の事思い出しちゃって。やめたとはいえ昔やってたから、思い出すと、結構キツくて。」 「じゃあ…どうして?」 長い睫毛がぱぱっと動いてぱっちりとした目が現れたけど、瞳は完全に潤ってた。 「友達が殺されたの。私と間違えられて。 しかもね、犯人、警察に自首して来たんだけど… 『高田彩希を殺してやったぜ』って笑いながらね、血だらけで自首して来たんだって。 どうやら、精神錯乱状態だったんじゃないかって。 それで病院に入院したんだけど…どうやったかは知らないけど逃げ出して、今は行方不明なんだ。 だから、私がアキバにいれば、そいつがまた現れるかなって思ってね。」 彩希さんの話に思わず唾を飲み込んだ。 「ちょ、ちょっと待って?それ、ストーカーみたいなもんじゃないの?そんなのがウロウロしてるかもしれないってかなり危ないよね。」 「うん…たぶん、ストーカー。ずっと、変な手紙送りつけられたりしてたからその人なんじゃないかな。 だから、ソウタは今でも私がここに留まってるのに猛反対なんだけど。 私、施設で育ったんだけどね? 間違えられた子と二人でずっと一緒に育ったの。 背格好も似てたから、『双子』なんて呼ばれてて。 中学も高校も一緒。 東京に出て来てからも一緒に暮らして、同じ喫茶店でバイトして。 ストーカーをされても、その子が一緒だったから心強かった。 なのに、そいつの勘違いで…。」 彩希さんがぎゅっと唇を噛み締めた。 「それに、お兄さんにも申し訳ないし、犯人を探してるなら、それに協力もしたいから。」 「そのお友達、お兄さんがいるの?」 「うん、施設に入る時に別れたお兄さんがいるの。…ソウタに聞いてない?今、一緒に居るはずなんだけどな、ソウタと。」 ドキンと心臓が音を立てた。 聞いて…いいのかな、この続き。 その答えがわからないうちに、彩希さんの口が開いた。 「『ミヤビ』さんって言うんだけど…お兄さん。」
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