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「アキバをね?離れたくない訳じゃないの。寧ろ、一刻も早くこんな所…。」
俯きがちのせいか、睫毛が長くてフサフサなのが強調されて、彩希さんの白い頬はとても滑らかだった。
可愛い子だな…
容姿もなんだけど、こう言うちょっとした仕草が可愛い。
人気になるのもわかる気がする。
「…ここにいたら、やっぱり『クサ』の事思い出しちゃって。やめたとはいえ昔やってたから、思い出すと、結構キツくて。」
「じゃあ…どうして?」
長い睫毛がぱぱっと動いてぱっちりとした目が現れたけど、瞳は完全に潤ってた。
「友達が殺されたの。私と間違えられて。
しかもね、犯人、警察に自首して来たんだけど…
『高田彩希を殺してやったぜ』って笑いながらね、血だらけで自首して来たんだって。
どうやら、精神錯乱状態だったんじゃないかって。
それで病院に入院したんだけど…どうやったかは知らないけど逃げ出して、今は行方不明なんだ。
だから、私がアキバにいれば、そいつがまた現れるかなって思ってね。」
彩希さんの話に思わず唾を飲み込んだ。
「ちょ、ちょっと待って?それ、ストーカーみたいなもんじゃないの?そんなのがウロウロしてるかもしれないってかなり危ないよね。」
「うん…たぶん、ストーカー。ずっと、変な手紙送りつけられたりしてたからその人なんじゃないかな。
だから、ソウタは今でも私がここに留まってるのに猛反対なんだけど。
私、施設で育ったんだけどね?
間違えられた子と二人でずっと一緒に育ったの。
背格好も似てたから、『双子』なんて呼ばれてて。
中学も高校も一緒。
東京に出て来てからも一緒に暮らして、同じ喫茶店でバイトして。
ストーカーをされても、その子が一緒だったから心強かった。
なのに、そいつの勘違いで…。」
彩希さんがぎゅっと唇を噛み締めた。
「それに、お兄さんにも申し訳ないし、犯人を探してるなら、それに協力もしたいから。」
「そのお友達、お兄さんがいるの?」
「うん、施設に入る時に別れたお兄さんがいるの。…ソウタに聞いてない?今、一緒に居るはずなんだけどな、ソウタと。」
ドキンと心臓が音を立てた。
聞いて…いいのかな、この続き。
その答えがわからないうちに、彩希さんの口が開いた。
「『ミヤビ』さんって言うんだけど…お兄さん。」
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