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「それにしても、あなた、ずいぶんカッコいい旦那さんつかまえて、羨ましいわ!うちのお父さんと取り替えて欲しいわ」
カラカラと笑うおばちゃんにミヤビさんがさっきと同じ白い歯を見せて笑う笑顔になる。
慌てて、夫婦ではなくてですねと否定する私の言葉はまったく聞かず、お似合いよとおばちゃんは満足そうに去って行った。
「間違えられちゃったね」
「いいんじゃないですか?その方が事が進みやすいってカケルさんも言ってたし。」
明らかに動揺をみせてしまった事ををからかわれるだろうと予期してそっけなく答えたらミヤビさんは「そっか、そうだね」と何故か嬉しそうにニッコリ笑う。
全然、動じない…。カイトより大分対応が大人だな。
カイトだったら「お前、何仏頂面してんだよ」って絡んで来るのに。
怪訝そうな私の顔も、夏の太陽の如く爽やかな笑顔に見事に返り討ち。
この人には敵わない気がして、諦めの溜め息を吐き出した。
不意にミヤビさんの手元でゲージが少し揺れた。
ニャー…
出して欲しいのか、落ち着かずに鳴き出す黒猫の声は不安そうに聞こえる。
けれどミヤビさんが「ごめんね、もうしばらく辛抱しててね」とゲージの入り口をトントンと軽く指先で叩くと不思議と、黒猫はそれで静かになった。
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