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◇
シャワーを浴びた後、再び家を出た。
海岸から歩道橋を渡って降りた所に二階建ての小さなコンクリートの建物がある。一階は夫婦二人で営んでいるイタリアンレストラン。じいちゃんは、ここのペペロンチーノが大好きだった。よく、お昼に食べに来て、午後習いにくる小学生に、「じっちゃん、ニンニクくせえっ!」と言われてた。横にある階段を登って行った先の二階のカフェのガラスのドアを押し開けると、伸びかけたあごひげを触りながらマスターがいつも通りに笑顔を向けてくれた。
「ミヅキちゃん、いらっしゃい。」
「あ、やっと来たよ。」
サンドイッチを頬張りながらカウンターに肘をつきこっちを見るカイト。マスターが苦笑いに変化する。
「君たちね、まだ開店前なわけ。うちで朝ご飯とる癖、何とかなんないの?まあ、俺も『いらっしゃい』っていっちゃったけど」
「まあ、まあ。どうせ、朝早くから起きてるでしょ?波に毎日乗ってるんだから。俺がくれば、波の話できるじゃん。」
「図々しいんだよお前は」
マスターがカイトの頭を小突く。
「ミヅキちゃんもカイトと同じ物でいい?ってか、それしか無いけど」
カイトの横に座った私の前に、美味しそうなサンドイッチとミックスジュースを並べてくれた。
「で?カイトなんか用?」
「おう、あ、マスターちょっと席外してもらえます?」
いけしゃあしゃあと、マスターに失礼な事を…
マスターが再び苦笑いして出て行くのを見送るとミックスジュースをまた一口飲むカイト。それから口を開いた。
「お前、俺と探偵やんねえ?」
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