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階段を登ってドアを開けるとキイッと古い金属音がして余計に胸が高鳴った。
入ったそこは想像通りの殺風景。刑事ドラマの取り調べ室の様な机と椅子が六つ頭をつけて並んでるだけだった。
窓側からひとつ空けてそれぞれの机に一人ずつ、三人の男の人が座っている。
「悪りぃ、遅れた。」
カイトが空いてる席にどかっと座ると「お前も座れば?」と一番端の席を顎で指した。
左隣の小柄な男の人に軽く会釈をしてそこに座ると「どうも」と微笑み返すその人。
色白で目が煌めいていて幼顔の彼の手の中には携帯ゲーム機が収まっていた。
「ソウタ!手、出すなよ。」
「さあ。それはどうなるかわかりませんけど」
面白そうにからかうカイトにソウタと呼ばれたその人は口元を腕で隠して笑っている。
「えー?ソウタはもっとちっちゃくて可愛らしい子が好きじゃん。あ、俺ミヤビ。よろしくね。」
私を助けてくれたつもりなのだろう。満足そうに微笑んだ、ミヤビさん。声が少し鼻にかかる感じでカイトとはちょっと違うけど、この人も目鼻立ちがはっきりしてる。
再びドアが古びた音を立てた。
「うーっす…って俺、最後?」
眉を少し下げ気味に笑いながらサラリーマン風の男の人が入って来た。髪の毛をふわりとさせて大きな二重に整った厚めの唇…随分イケメンだな、この人。
一番端で机に伏せて寝ていた人が伸びをしながらにっこり笑い、サラリーマン風の男の人を見た。
「カケル、おはよ。珍しいね約束の時間遅刻するなんて」
「ヤマサンに言われると響くなー。」
『ヤマサン』?!
ほ、本名が『山田』とかなのかな…
当の本人は細めの目に更に目尻に皺を寄せて優しく笑っているだけ。
あの落ち着き様、確かに『ヤマサン』ぽい。
皆さんさほど歳が離れていないってカイトは言ってたけど、ヤマサンもなのかな。
「遅刻はお土産持って来たからそれで許して?」
ヤマサンに『カケル』と呼ばれた人が一枚の写真を机に置いた。
何これ?と、カイトが反対側の一番端からそれを覗き込む。
…黒猫だよね。
視線が写真へと集中するとカケルさんは、満足そうにニヤリと笑った。
「これが我が探偵事務所のFirst caseだ。」
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