2.黒猫の片鱗

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◇ キュッ… シャワーを止める音が辺りに鳴り響く。 横浜桜木町にある、夜景の見える高級ホテルの一室。 少し広めの浴室には、必要の無いジャグジーがあって、お湯の溜まっていないそれが余計に音を反響させて静けさを際立たせていた。 …今日は首筋か。 鏡越しに見る痣。 1000万円を即金でサラ金に返した時に、ヤクザまがいの男に毒づかれたのを思い出した。 “やってる事は娼婦と変わらねえよ。1人に抱かれ続けるか、沢山に抱かれるかだろ?どっちにしろ、終わらねぇ地獄だ。” 浴室から出て行くと、“アシナガオジサン”はソファへもたれかかり、ふかしていたタバコを灰皿へ置いた。 「おいで」 腕を引っ張られて強引に唇を塞がれる。 きっと、私は意思無くこの人に抱かれる今を地獄だとは思っていない。 でも、幸せだとも思わない。 .
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