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「あの、杉田くん……」  尚人は言いかけて口をつぐんだ。  ――無理っ! 聞けない! だって、もし違ってたらとんでもなく恥ずかしい勘違いだ。 「髪乾かすから、横になってください」  淳がドライヤーを片手にそう言ったので、パニックになった。  えっ、ほんとに!? ほんとにそうなの!?  もういっばいいっぱいで、どうしていいのか分からない。  絶対無理だと思いながらも、本当はどこかで惹かれているのを感じる。  でも、勇気が出ない。ハードルが高すぎる。 「おいで」  やっぱり断ろうとしたとき、ふいに腕を引かれた。 「わっ」  そんなに強い力ではなかったけれど、途方に暮れていたので簡単にぐらりと体が傾く。 気づけばそのまま彼の膝に横たえられていた。
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