プロローグ

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「論文どう?」  信号待ちをしているときに祐樹が聞いてきた。 「頑張ってるよ。祐樹は? 仕事」 「色々やらせてもらって、結構やり甲斐でてきたかな」  この男はどこに行ったってうまくやれるだろう。 責任感が強く、頼り甲斐があるのは昔から変わらない。 祐樹は地元の大学を卒業後、そのまま地元の銀行に就職した。 誠実で、安定した堅実な職についていて、和美はいい男を捕まえた。  考えて胸がちくりと痛む。そして、そんな自分に嫌気がさした。 「へー、理想の結婚相手だよなぁ」  からかって笑い飛ばそうとしただけだったのに、思いがけず車内に微妙な空気が流れてしまった。
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