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「あー……」
祐樹が耳の後ろをかきながら照れたような困ったような声を出して、まさか、と嫌な予感が駆け抜ける。
「あとでゆっくり話そうと思ってたんだけど、実はね……」
和美がちらりと祐樹を見て、祐樹がその先の言葉を継いだ。
「俺たち、結婚しようと思ってる」
信号が変わる。車が走りだす。
心臓が、早鐘を打つ。
「……尚人?」
ふたりが不安げに自分の反応を待っている。
早く言わなければ。なるべく自然に、明るく。
そう思っても、おめでとうの一言が喉元で詰まって出てこない。
くそ、ずっと覚悟してきたことだろう。
――できる。やる。
尚人は大きく息を吸って、精一杯の笑顔を作った。
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