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* 「御崎コーポレーション本社までお願いします」 はい、と愛想の良し悪しもない返事をするタクシードライバー。 駅まで10分程度の道のりを歩くことが怖くて、自宅マンション前までタクシーを呼びつけた。 本当は家を出るのもためらったけれど、さすがにあの程度のことで会社を休むわけにはいかない。 私の部屋番号を知ってるってことは……家を出るところだって、見られてる可能性は大いにある。 無防備に自分の行動を晒すなんて、身の危険を高めるし、何より…… ……怖い…… ぶり返した震えを抑えるために、乗り込んだタクシーの後部座席でバッグを抱えて、ぎゅっと両手で抱きしめた。 昨日のように、妹尾さんが駅まで迎えに来てくれているなら、不本意だけれど、それに甘えることもできたかもしれない。 けれど、彼は今日、出社前に社長を迎えに行くことになっている。 昨夜、取引先との会食があった社長を最後は自宅まで送り届けているはずだから、今朝は社長の足がないためだ。 でも…… それでなくとも、妹尾さんには迷惑をかけるわけにはいかない。
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