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「お疲れさまでございます」
履歴書の写真と同様、きちんと整えられた黒髪。
黒のスーツに白い手袋の様相の彼は、いわゆる執事のようにかしこまる。
「妹尾さん、ですね。お疲れさまでございます。
秘書課室長の有坂です。今日からよろしくお願いいたします」
社交の笑みで真面目そうに笑む彼に、挨拶を交えて自己紹介した。
「妹尾さん、今日からよろしくお願いします」
女子社員の心を鷲掴む微笑みを貯え運転手に頭を下げる社長。
他の上層幹部達は、運転手ごときに頭を下げるなんてことは、絶対しないだろう。
深々と頭を下げる妹尾さんが直ったあと、彼に開けられた後部座席に乗り込む社長は、やはり「ありがとう」と言葉をかける。
白手袋がドアを閉めると、こちらへ振り向く妹尾さんは、私に会釈をした。
「お気をつけていってらっしゃいませ」
頭を下げ返し、運転席側に回る背中を見送る。
出発する車に45度のお辞儀をして、エンジン音が消え去るまで、その場を動かないのが、私の仕事である。
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