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* 薄明かりの照明が、大きな窓ガラスを姿見のように私の全身を浮き立たせる。 足元に広がるのは、夜空から降り注いだ満天の星達。 本物の星よりずいぶんと力強い瞬きの集まりは、誰しもが心を奪われることだろう。 見慣れたけれど見飽きることなく、私はもう何年も通うこのホテルで、同じ夜景を眺めてきた。 だいたい月に1、2度。 でも今日は、2ヶ月ぶりだ。 指折りこの日を数えている私は、さながら恋する乙女。 目映い夜景から視界を引くと、黒い鏡に映る表情は、なんだか嬉しそう。 腕に着けた細い時計に目を落としたところで、背後のずっと奥の方で、扉をノックする音が聴こえた。
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