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* 朝目覚めたベッドに、温もりの残骸はない。 名残を落とす前に、社長は愛する妻を迎えに帰っていった。 妻の恋人の元へ。 『いいよ、ゆっくりおやすみ』 社長は微睡みなど少しも引かずに、ホテルの部屋を出る。 散々その甘い声で翻弄され尽くした私の耳に、優しい台詞を吹き込んで。 自宅のベッドとは違う肌触りの中で、ひとりで朝を迎えるのは毎回のことだ。 部屋に運ばれるモーニングが一人分なのも、いつものこと。 昨夜は、……凄かった…… スクランブルエッグをフォークで掬いながら、シャワーでは流しきれなかった社長の熱に身震いする。 久しぶりだったし…… 溜まってた、のかな…… なんて下品な表現。 あの爽やかな社長には似合わない。 どちらかというと、私の方が抱かれたがっていたような気がする。 女だって、シたいときくらいある。 ……だって、2ヶ月も空いたし。 男性のそれの捌け口である自覚はある。 でも、あの人の抱き方はそれをうやむやにしてくる。 激しいくせに、優しくするんだもんな…… 指先の一本一本が、私を慈しむ。 身体中を這う口唇は、私の隅々に愛を囁いている気がしてしまう。 いっそ、もっと明々に性だけをぶつけてくれればいいのに。 まったくもって……狡い人なのだ。
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