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* 桜色のフレンチネイルの仕上がりと、最上のエステで洗練してもらった全身。 満たされる自負心に、自然と表情も緩む。 気分良く背筋を伸ばしてフロントに立ち、チェックアウト。 きりっとしたフロントクラークの男性が、「ありがとうございました」と物腰柔らかな笑みで頭を下げる。 私はここで、キーを差し出すだけ。 自前の財布を出すことはない。 今まで、ただの一度も。 これがより濃く、社長と私の関係をはっきりと裏付ける。 昔から変わらないこと。 あくまで、恋人同士ではない関係。 社長は既婚者なのだから、当然なんだけど。 私は、私を社長に差し出し、 社長はそんな私に、最上のもてなしをする。 そこに愛は無いのだから、 つまり、……‘そういうこと’だ。
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