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このフロントに立つ一瞬だけが、私にそんな事実を突きつける。
けれど、すぐにサロンでの言葉に、上塗りされる。
『とても愛されてるんですね』
私の肌が綺麗だと言うサロンのお姉さんに、身体を撫でられながら賛美された。
『そんなことないです』と謙遜しながらも、その言葉は私に自惚れを塗り付けた。
あるわけがないとわかっているのに、そう思い込んでしまうのは、あの人の振る舞いのせいだ。
財布を出さずにここから出られる理由は、笑みを咥えた横目で流して踵を返す。
気負いなんて一切持たずに顔を上げると、きらびやかな昼前のロビーの中に、見知った顔を見つけた。
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