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昨日業務終了間際、わざわざ遠く離れた秘書室まで足を運んでくれた。 そのときは、もっと落ち着いた印象を受けたのに。 これから秘書と運転手として、お互いに社長をサポートする立場にある私達。 お互いに連携を取っていこうと、良好な関係を約束し挨拶を交わした。 仕事上、親睦と連携は大切だとは思うけど…… まさか、ほぼ初対面の人と、しかもふたりで食事なんて、 ……気まずいことこの上ない。 「まだお昼には早い時間ですし、有坂さんの予定に合わせますから」 けれど、この屈託ない笑顔は、そんなことなど気にも留めないらしい。 たしかに、これからの予定は私一人だし、断る理由なんて、気まずい以外にはない、けれ、ど…… ……あ、あれ……? 妹尾さんは、どうして……私が“一人だ”と思っているの? 『俺も一人なんですよ』 俺、“も”……なんて、解せば単純に私を含めての言葉だ。 私がそう思ったように、ビジネスホテルとして使うのには、いささか豪華すぎるここに、宿泊をするなら家族か恋人か、 当然、一人ではないと察するのは、突拍子もないことではないはず。
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