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「イタリアンの美味しい店知ってるんですよ。  そこのスイーツもなかなかの評判で……」 たしかに、……たしかに私は一人だ。 お一人様だ。 チェックアウトも、私一人だったところを見られたのかもしれない。 だけど、連れがいるかどうかうかがうくらいは、必要なのではないだろうか。 「あ、あの……っ」 構わず話を進めようとする妹尾さんを遮る。 遮ったところで、お誘いを直ちに断る言い訳が思いつかず、またしても先に間を取られてしまった。 「……ご迷惑だっていうのは、わかってます。  すみません」 ふっと笑顔を薄くし、素直に謝られてどきりとする。 妙なときめきなんかじゃない。 思いのほか、妹尾さんが常識のうかがえる範疇にいる人だったからだ。 最初の印象通り、紳士然とした真面目そうで爽やかな風体。 「やっと、きっかけが出来た。  ずっと、あなたとお話がしたかったんです」
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