7990人が本棚に入れています
本棚に追加
前髪に影を作られた眉をしんなりと下げられると、変に邪険な扱いができなくなる。
もちろん邪険にする理由はどこにもないのだけれど。
「話くらい、……業務に差し支えないときなら、いつでもいいのに」
一日中忙しなくしている秘書の私達にも、昼休みくらいはある。
ランチに出たり、社食で昼食を採ることだってある。
昼休みでなくとも、業務が終わってからでも、声を掛けようと思えば出来る。
他の部の社員とだって、顔を合わせる機会なら、いくらでもあるのだ。
さらに言えば、1階にある運転手室と15階の秘書室とでは、距離こそ離れているものの、業務上の関わりは他のどの部署よりも、近いところにあるのに。
「秘書課ってやっぱり、高嶺の花じゃないですか」
妹尾さんが言うには、そういうことらしい。
「仕事上の関わり以外で、こんな形でもないと、きっと近づくこともできなかったから」
最初のコメントを投稿しよう!