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こういうとき、どう答えればいいのか……わからない。 マニュアルとかテンプレとか、そういった資料が私の机上にはない。 表の表情は変えないまま。 心の中の口が、間抜けにあくあくと言葉選びに難航している。 そういえば、いつか社食に行ったとき、南ちゃんがイケメン風の男性社員と話していたことを思い出した。 あのときたしか、彼女もご飯に誘われてて…… 『ええ~、どぉしよっかなぁ。もちろん奢ってくれるんですよねぇ?』 きゅるんとしたぶりっこオーラを惜しみなく全開にして、手入れした長い睫毛できゅんきゅんに瞬いていた。 …… ……な、ないない。 アラサー女子に、そんな苦行の手段はない。 玉のような肌を持つ二十代の南ちゃんとすり替えて想像した自分の様相に、寒気がした。
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