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だいたい、よく知りもしない人と食事をしながら、何を話すのか。 だけど、親睦と言うなら、何も知らないからこそ深めるもので…… そもそも、なんだ。 私はこの誘いを受ける前提での返答を考えている、の? 詰まる所、……嬉しいのだ、ナンパが。 だけどーー…… 何も難しく考えることなんてない。 ただ一言、イエスと答えればいいだけの話なのだ。 それなのに…… 柔らかなあの笑みと、触れた感触の残る温かな体温が、胸を燻る。 今ここに、一切の罪なんてありはしないのに。 生まれた感情に、……罪悪感が胸中を渦巻く。 「本当に、すみません。急ではご迷惑ですよね」 どのくらいの時間を待ってくれて、妹尾さんは言ったのだろう。 申し訳なさそうに首を傾げている彼を前にして、一時的に回避できた事態に、強張っていた肩の力が抜けた。
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