最終章

3/29
前へ
/476ページ
次へ
あれから、十数日が経った今日。 今回の商談の証印を交わしに来社していた宮下専務に、挨拶を兼ねて見送りに出てきた時点で、樋口さんが専務のもとを去ったということはすぐに察した。 「一応ね、説得というか、……もう少し自分の力と思いを、信じてみたらとは言ったんだよ。  他人に決められた人生を、彼自身が自分のために変えることができればと思ってね」 「……」 あのあと、社長が樋口さんにどんな話をしたのか、あえて私の方から聞くことはしなかったし、社長もわざわざ話すこともなかった。 社長は私に気を遣ってくれていたし、私もそれを暗に感じていたから。 あれからも、社長との関係は良好。 息の合い方は、妹尾さんから嫉妬されても仕方ないくらいぴったり。 むしろ、プライベートを切り離した分、以前よりも、ビジネスパートナーとしての結びつきはぐっと強くなった気さえする。
/476ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7987人が本棚に入れています
本棚に追加