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あれから、十数日が経った今日。
今回の商談の証印を交わしに来社していた宮下専務に、挨拶を兼ねて見送りに出てきた時点で、樋口さんが専務のもとを去ったということはすぐに察した。
「一応ね、説得というか、……もう少し自分の力と思いを、信じてみたらとは言ったんだよ。
他人に決められた人生を、彼自身が自分のために変えることができればと思ってね」
「……」
あのあと、社長が樋口さんにどんな話をしたのか、あえて私の方から聞くことはしなかったし、社長もわざわざ話すこともなかった。
社長は私に気を遣ってくれていたし、私もそれを暗に感じていたから。
あれからも、社長との関係は良好。
息の合い方は、妹尾さんから嫉妬されても仕方ないくらいぴったり。
むしろ、プライベートを切り離した分、以前よりも、ビジネスパートナーとしての結びつきはぐっと強くなった気さえする。
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