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否応なしに胸は弾ける。
驚いたのは妹尾さんも同じだったようで、正面を見据えたまま一時停止した。
「お疲れ様。悪いね、呼び出して」
再生ボタンを押したのは社長だ。
「いえ、とんでもございません」
はたと瞬きエレベーターを降りる妹尾さんとは、今朝出勤時に会社の駐車場で別れたきりだ。
……といっても、ほんの3時間前のことなんだけど。
今でも、妹尾さんは私の自宅から出勤をしている状態。
近頃は、私の部屋に、少しずつ妹尾さんの私物が増え始めた。
言う人が言えば、"ついさっきまで一緒にいた"んだけど。
でも、しばらくぶりに顔を合わせたような気分に脈が乱れる。
大げさではなく本当にそう思うんだから、私は相当重症だ。
「お疲れ様です」
「おつかれ、さまです……」
立ち止まる私達に追いつく妹尾さんと、不自然にも挨拶を交わす。
いつだって変わらない真っ直ぐな瞳をまともに受けられずに、上目遣いにちらりとだけ盗み見た。
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