7958人が本棚に入れています
本棚に追加
/476ページ
「でも、よかったよ。
ふたりを見て……安心した」
ついさっきまであったビジネス上の関係性が、不意にほぐれたのがわかった。
背徳に及んでいた、私と御崎くんの間にあった男女の結びつき。
それを断ち切ろうとしてくれた妹尾さんの正義感と優しさと、ほんのちょっとの強引さにほだされた。
今ここにあるのは、その過程を経てようやく落ち着いた空気。
「妹尾さん、……有坂のこと、よろしく頼むよ。
今まで何にもしてあげられなかったから、その分、うんと甘えさせてあげてほしい」
先日言ったとおり、社長はまるで私を嫁に出すような父親の顔をする。
「当然です。最初からそのつもりですから」
「やっぱり手厳しいな、妹尾さんは」
社長に対して、少しだけ棘を含めるのも最初から変わらない。
あまり快く思っていない雰囲気は、社長の前でもブレることはないようだ。
最初のコメントを投稿しよう!