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ライトブルーのカーペットに足を踏み出すと、後ろ手に扉を閉めた妹尾さんと、ごく自然に目が合った。
廊下には誰もいないことをいいことに、真っ直ぐな瞳が瞼に隠されながら傾き近づいて来る。
口にされずとも伝わる思惑に胸を逸らせると、温かな口唇が私に重なった。
「ダメですよ、こんなところで……」
「誰も見てないだろ」
「……ん……」
せっかく作った隙間がまた詰められる。
見られていなかったとしても、すぐ後ろの社長室には社長がいる。
こそこそとした雰囲気のスリルに、心臓がむず痒くなる。
落とされたキスが優しくて、火照る頬っぺたがゆるりと締まりをなくした。
「……ランチ、行こうか」
「……はい……」
妹尾さんとは、社内で顔を合わせることはあっても、なかなか長い時間一緒にいることはない。
まだ離れたくないと思っていた私の気持ちが伝わったのかもしれない。
ランチに誘ってくれた妹尾さんに、即答した。
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