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どぎまぎと平静を装いながら、ヨレているかもしれない口元を咄嗟にうつむき隠す。
私など目もくれずに一斉に乗り込んできたのは、会社指定の制服を来た女子社員達だ。
「えー、まじでー?」
「ヤバイって、ほんと」
「それでさー」
うつ向いているために正確な人数はわからないけれど、こつこつとヒールを鳴らし通る気配から察するに、5、6人はいるようだ。
妹尾さんとのせっかくの甘い空気が、複数交じり合う粉っぽいニオイに木っ端微塵に弾き飛ばされる。
当の彼は、どこに行ってしまったんだろう。
パネルの前に心細く佇む私の眼下で、綺麗に装飾のされたネイルがにょきっと伸びてきて、“1”のボタンを押した。
「せのーさーん、お疲れ様ですぅ。お昼ですかぁ?」
「ええ、ちょっと外に出ようかと」
ずいぶん後ろの方で、女の子の猫撫で声が妹尾さんに話しかけた。
「どちらまで?」
「まだ決めてはいないんですが」
「えっ、じゃあ、一緒に行きませんかぁ?」
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