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優しい声音に、きゅっと音を立てる心臓。
小さく頭を振ることだけが精一杯の私を、妹尾さんは後ろからそっと抱きしめた。
「……妬いた?」
私を包む温かさと、私を気遣う優しさに、胸の奥から急騰する想いが溢れ出す。
口唇こそ突き出しはしなかったものの、背を向けていた私の表情なんて見えていなかったはずなのに、口に出していない気持ちを察してくれる妹尾さんが、たまらなく好きだと思った。
首だけで振り返り、例のごとく私を待ち受けてくれる真っ直ぐな瞳に、心臓はけたたましく音をかき鳴らす。
声を出すことすらままならない高揚で、顔が火照った。
私を映す瞳がめらりと揺らめいたところで、エレベーターは地下駐車場を面前に晒す。
目の奥に炎を見せていた妹尾さんは、瞬きの裏にたぎるものを隠し、私を解放する。
何を期待していたのか、がっかりする胸を、妹尾さんから顔を背けて誤魔化した。
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