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駐車場の片隅。
ふたりを待ち受けるビンテージ風の真っ白なスポーツセダン。
この前の惨劇を思わせず、凛とそこに佇んでいた。
「でも、妹尾さんがそんな風に思うほど、社長は私に特別な感情はお持ちではありませんでしたよ?」
助手席側に私を連れる妹尾さんは、ドアノブに手を触れたまま動きを止めた。
「たしかに不徳の関係にあったことは事実ですが、……社長は、父親のような気持ちだって、おっしゃってました」
手元から顔を上げる妹尾さんは、わずかに眉をひそめる。
「あの人がそう言ったんですか?」
「え、……あ、はい。
……娘を嫁に出すような気分だって、最後、に……」
真っ直ぐに落ちてくる視線に胸を射抜かれ、鼓動が強まる。
繋がれていた手が引き上げられると、私の身体ごと、真っ白の車体に押し付けられた。
「……あの人が、本当に心からそんなこと思っていたと、思ってるんですか」
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