最終章

21/29
前へ
/476ページ
次へ
駐車場の片隅。 ふたりを待ち受けるビンテージ風の真っ白なスポーツセダン。 この前の惨劇を思わせず、凛とそこに佇んでいた。 「でも、妹尾さんがそんな風に思うほど、社長は私に特別な感情はお持ちではありませんでしたよ?」 助手席側に私を連れる妹尾さんは、ドアノブに手を触れたまま動きを止めた。 「たしかに不徳の関係にあったことは事実ですが、……社長は、父親のような気持ちだって、おっしゃってました」 手元から顔を上げる妹尾さんは、わずかに眉をひそめる。 「あの人がそう言ったんですか?」 「え、……あ、はい。  ……娘を嫁に出すような気分だって、最後、に……」 真っ直ぐに落ちてくる視線に胸を射抜かれ、鼓動が強まる。 繋がれていた手が引き上げられると、私の身体ごと、真っ白の車体に押し付けられた。 「……あの人が、本当に心からそんなこと思っていたと、思ってるんですか」
/476ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8002人が本棚に入れています
本棚に追加