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中に見えたのは、数枚の写真。 ゆっくりと引き出すと、遠巻きに誰かが写っているとわかる。 恐る恐る中身の全部を晒した途端、 「……ひ……ッ……!!」 悲鳴になりきらなかった声とともに、思わず取り出したものを床に散らばしてしまった。 口を覆った両手が、凍えたように大きく震える。 手だけじゃない。 足元から頭のてっぺんまで駆け上がった凄まじい悪寒が、私の全身を震え上がらせた。 床に広がる数枚の写真。 そこには二人の人が写っていた。 一人は……私。 隠し撮りのように遠巻きに写る背景は、先日泊まったホテルのエントランス。 少し困り顔をした私の隣には、ミニボストンを持った妹尾さんだ。 それが妹尾さんだとわかるのは、その日の服と私の記憶があるから。 他の人がその写真を見ても、それが彼だとは絶対にわからない。 だって、数枚の写真に写る妹尾さんの顔はすべて、 鋭利なピンの様な何かで、めった刺しにされていたんだから。 .
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