【第1章】色をなくした世界

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「心の問題って…私の心には何も問題はないはずだ。というより、何も感じない。では、どうにもならないということだな」 ドールはしばらく腕を組んで考え込んでいたが、何かを閃いたのか手を叩くと 「いや…そうではない。リヒトはすべてにおいて完璧だが、そんなお前に足りない物がある。お前の安らげる場所だ。恋人を作るのでもいいし、家族を作るのでもいい。本当の意味で“心の解放”ができれば、あるいは…」 と途中まで言いかけて、ドールは突然何かに遮られるように押し黙る。私はその様子に違和感を感じたが、彼が驚くほどに冷や汗をかいていることに気づき、言葉を失う。 「と、とりあえず。現状維持できているなら問題はない。他に不具合がでたら、また私に教えてくれ。では!」 そう言うと、ドールは慌てて診察室から出て行ってしまった。 ちょうどドールと入れ違いに、シヴィルが意気揚々と診察室に入ってきた。 「喜べリヒト♪ついに、あいつを断罪する許可が出たぞ。組織No.1のお前とNo.2の俺に指令が下された。いやあ、ドイツ支部に来た甲斐があったってもんだ♪」
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