【序章】光という名の男

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「ありがとう」 そう言って、彼女は人類史上見たこともないほど極上の笑みを浮かべた。 こんな真っ暗闇に落とされた世界で… 光り輝くばかりの女性は、最期の瞬間、ただただ笑っていた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 1488年 ドイツ ミュンヘン 「ひいいい!や、やめてくれえ!」 夜の帳(とばり)を今にも下ろそうとしている街は、半分は茜色に、残り半分は深淵の闇に染まっている。その闇の中、一際大きな悲鳴が響き渡る。 人気のほとんどなくなった通りを1人の男が走っている。その後ろから、フードを目深に被った人影が2つ。闇の中でも赤く浮かび上がる瞳が2つ、フードの隙間からチラチラと覗いている。
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