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赤い瞳の男は黒いフードに手をかけながら、男の申し開きを待つ。だが男は目の焦点を合わせることもままならないのか、あちらこちらに視線を飛ばすと、意味不明の言葉を並べ立て始める。
諦めたように自身のフードを外すと、そこから銀色に光る髪の毛がこぼれ落ちる。わずかに残る陽の光を背後から受け、銀色の御髪はキラキラと光を乱反射し、赤い瞳は表面はルビーのように眩いばかりの輝きを、内部は鮮血のように魅惑的な輝きを秘めている。その神々しいまでの美しき姿を見上げた男の表情が、恐怖から恍惚へと変わっていた。
「ふ…死にゆく者に、そこまでいい思いをさせてやる必要はない。さあ、ルードヴィヒ。お前の独り立ちを祝う、初仕事だ。罪状を読み上げ、裁きを下せ」
そう言うのは、ルードヴィヒの恩師であり上司である男。本名は誰も知らず、周りからは【Lehrer(レーラー)】“先生”と呼ばれている。
「そなたは幾多の罪を犯した。窃盗、詐欺、殺人…その中でも最も赦(ゆる)されざる罪は、【闇】に堕ちたことである。よって、【Henker(ヘンカー)】である我々が光の名の下に、そなたに【光の断罪】を執行する。その命を以って、償いを為せ」
ルードヴィヒは左手から銀色に輝く短剣を取り出す。そして次の瞬間、男の額に突き立てた。
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