【第1章】色をなくした世界

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1614年8月 Henker ドイツ支部 「今日の相手は、まだほんの子供でさ。危うく躊躇して取り逃がすところだったぜ」 そう言いながら談話室に入ってきた青色の髪と瞳を持つ男は、気だるそうに私の読んでいる本を取り上げると、目の前にどかっと腰を下ろす。 「【Syvil(シヴィル)】。本くらいゆっくり読ませてくれ。仕事が立て込んでいて、なかなか読書する時間も取れないのだから」 シヴィルと呼ばれた男は同志であり、私の数少ない心を許せる友の1人である。 「まあ、そう堅いこと言うなって。久しぶりに会えたんだから、親友との会話を楽しもうぜ」 「では言わせてもらうが、子供だからと言って何を躊躇することがあるのだ。子供ほど純粋に闇に堕ちやすい。一度堕ちてしまえば救うことはできないのだから、断罪するしか手がないのは、シヴィル…お前も重々承知しているだろう」 「じゃあ、リヒトは今まで躊躇したことないってのか?」
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