第1章

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「なんか喜んでるみたい」 そう五月に話しかけると目にいっぱいの涙を溜めていた。 「ちゃんと送ったぞ」 俺はわたわたしながら五月の肩を抱いた。 「ありかとう」 五月はそのまま気を失った。 しばらくして 「あれ?私寝ちゃった?」と何事もなかったように目を覚ます。 「五月、大丈夫か」 頭をさすりながら泣きそうな声で聞いた。 「それより本文はなんて書いてたの」 記憶喪失 直感的に思った。やはりこのメールは見てはいけないものだったんだ。 メールを削除しようと受信の欄を見るが先ほどのメールが見あたらない。 「消えてる」 ポツリと呟いた。 「どうせやらしいメールだから消したんでしょー」 覚えていないならそれに越したことはない。 「バレたか」 「私がいるのに~」 ぷくっと膨らませたほっぺをポチッと押すと 「ぷふぅ~」と言ってまた太陽みたいな笑顔になった。 それから、七十年後 五月と結婚した俺は七十年間一度のケンカもなく幸せに暮らしていた。 老衰で亡くなった五月の荷物を整理していると古い携帯電話が出てきた。 「わしの携帯だ」 昔使っていたがスマホに替えたあと無くしたと思っていたのに。 「そういえばあのメール、七十年後から送ったって書いておったな」 懐かしくなりメール欄を見ると未送信のメールが一通あった。 そのメールのタイトルには 『めいるおをくります』 と書いてあった。 そうか、このメールだったのか。 わしは送信ができる筈がない携帯から送信した。 鳴るはずがない送信音がなった。 メールは送信欄から消えていた。 そうかこれだったのか。 メールを見て滅入る。
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