二十歳までのカウント

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「やだねぇ、自分にはメールがこないからってひがんじゃって」 「ひがんでねぇよ。だいたいこれ通信料がはんぱないって話だろ。俺はメールがこないことをひがむより、無駄な通信料を払わない半年後の俺を誉めたいね」  しかし、半年後の人間達はいったい何を考えてメールを送るのか。半年後の人間達は同じようにこの時期に未来からのメールを受け取り始めたはずだ。受け取って、あまり役に立たないとわかっていながら何故こんなメールを送るのか。これはやはり、流行りには取り合えず乗っておこうというやつなのか。 「で、お前の用件はこれだけか?ならもう帰るな」  俺は疲れてんだよ、そう言いながらその場を後にしようとしたシンを、カズマが慌てて引き留めた。 「いや、これだけじゃないから。本題は別にあるから。佐々木って覚えてるか?」 「佐々木?佐々木って、どこの佐々木だよ」 「俺は高校の時バイトが一緒だったんだけど、なんかシンと小学校が一緒だったって言ってさ」  そこまで言われて、シンは「あぁ」とつぶやき、一人の少年を思い出していた。シンが通っていた小学校は一学年一クラスしかない小さな小学校で、6年間を共に過ごしたクラスメイトの顔と名前は今でも何となく覚えていた。佐々木といって思い出されるのは、サッカーがうまくて、クラスでも目立つ存在だった佐々木だ。 「で、その佐々木が、なに?」 「お前に連絡先渡して欲しいって言われてさ」  と言ってカズマはポケットからしわくちゃのメモ用紙を差し出した。さっきまでメールの話をしてたんだからこんなのメールで送れよ、と呆れながらシンはメモを受けとる。 「しかし、なんで今さら俺なんかと連絡とりたいんだ?」  シンは佐々木と大して仲が良かったわけではない。ただクラスメイトだっただけだ。わざわざカズマを通してまで連絡をとりたいのかがわからなかった。 「あ~、なんか、小学校の時の約束で、今年の年末に二十歳の同窓会をすることになってて、その幹事が佐々木ってことになってたけど、それをシンに代わってもらえないかって」 「はぁ?なんだよ、それ。冗談じゃねぇよ」  突然の話に、シンは露骨に嫌な顔をした。
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