二十歳までのカウント

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 なんだよ、こんな時に。そうは思ったが、いつもの習慣か、思わず携帯画面を確認してしまった。  画面を見れば、すでに風景と化した待ち受け画面が目にはいる。真っ黒い画面の中心に青い文字で『あと152日』とだけ表示されていた。設定日時までの日数が表示されるアプリ。中学の頃から、シンの待ち受けはこれだった。152日後にあるのはシンの二十歳の誕生日。だが、なぜ二十歳の誕生日を設定したのかは覚えていない。深い考えもなく設定したのかもしれないが、機種変をしても、いつも画面はこれにした。なんとなくそうしなければいけない気がした。  そんな思い入れがあるのかないのかわからない待受画面をスルーし、メールを開いた。 「は?」  その内容を見たシンは怪訝な表情を浮かべた。 「なになに?」  突然立ち止まったシンに、カズマは興味津々といった様子でシンの携帯の画面を横から覗きこんだ。が、やはりその内容が即座には理解できず首を傾げた。  メールにはこう書かれていた………… 『わいわい茶 紫水玉 蛙 買』 「なんだよ、これ」  意味がわからない。また質の悪い迷惑メールか。シンがメールを無視してポケットにしまおうとした時、カズマが慌ててその腕を引いた。 「ちょっと待ってよ、シン!この送信元と送信日付見ろよ!」  言われたとおり送信元と送信日付を見れば、送信元はシン自身で送信日付は半年後になっていた。 「シン、これ、あれだよ。半年後メール!やったな!」  まるで自分のことのように喜ぶカズマに対し、シンは頬をひきつらせた。ついさっきカズマの半年後メールを意味がないとか、わざわざ高い通信料を払ってまで、とバカにしたばかりなのに。しかも、この内容………… 「でも、これ、意味わかんねー」  シンも思っていたことをずばりと言うカズマに、シンは腕を振り払うと乱暴に携帯をしまった。 「何かの間違いだろ」  何かの間違いであって欲しい、そう思いながら歩き出したシンをカズマは追った。 「でも、半年後のシンだろ?何か意味があるんじゃあ…………」  そこでカズマは、隣を通りすぎた女の子の鞄を思わず見た。鞄につけられた赤いチェック柄の蛙。見覚えのあったカズマは、思わず「あー!!」と大声で叫んだ。
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