二十歳までのカウント

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「なんだよ、うるせえな」 「わかった!わかったんだよ、メールの意味!今、わいわい茶の500mlペットボトルに蛙のストラップがおまけでついてるんだよ!チェックとかボーダーとか水玉の蛙が!それを買えってことだろ!」  カズマが通りすぎた女の子の鞄を指差しながら叫ぶ。いや、指差すなよと、女の子の痛い視線に気まずくなりながらもちらりと鞄を見れば、確かに原色のつぶれたような蛙が異様な存在感を放っていた。 「…………あれを、か?」 「そう!」  なぜか興奮した様子のカズマはぐっと拳を握りしめた。 「なんであんなのを…………」 「あれ、女の子の間でめっちゃ流行ってるんだよ。でも種類が多くて全種類集めるの大変で」 「…………詳しいな」 「2番目の姉ちゃんが集めててな」 「ふ~ん」  そこで話を終わりとばかりにシンが再び歩き出したので、カズマは慌てた。 「買いに行かないのか!?」 「買いに行くわけないだろ」 「なんで」 「何でって、なんでそんな訳のわからないメール信じて買いにいかなきゃならないんだ」 「いやいやいや、これを送ったのは半年後のシンだろ?なにか理由があるんだって」 「理由って?」 「あれだよ、きっと半年の間にシンには彼女ができたんだよ。それで、その彼女がこの蛙を集めていて、紫水玉の蛙を見つけてくれなきゃ別れるって…………」 「…………そんなことで別れ話を切り出すような彼女なら、こっちから別れる」 「いやいやいや、今のシンは彼女がいないからそう言うんだって。夢も希望も信じない超現実主義者のシンが、半年後には変わるんだよ。恋を知ってな」 「…………お前、人のことをそんな風に思っていたのか」  思わぬ形で知ることとなった友人の本音にシンは冷ややかな目線をむけるが、カズマの熱弁は止まらない。 「なぁ、信じてみようぜ。恋で変わったとはいえ、超現実主義者のシンが高い通信料払って送ってきたメールなんだからさ」  彼女のためにこんなメールを送ったとは信じたくはない。信じたくはないが………… 「…………わかった。買いに行けばいいんだろ」  カズマの熱意に押され、シンは買いに行くことにした。ほんの軽い気持ちで。
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