二十歳までのカウント

9/13
前へ
/13ページ
次へ
…………702号室は、ここの奥か…………  エレベーターを降りたシンは、ナースステーションや談話室を横目に、真っ直ぐ目的の部屋を目指す。  病院名が記されたメールを見た時、どうすべきか悩んだ。昔祖父が入院していたことがあり、中央病院には何度か行ったことがあった。だからといって、病院まで遠いことに変わりはない。どうするか、さんざん悩んで、シンは行くことを選んだ。ここまでメールの指示に従ってきたせいかもしれないが、なぜか行かなければいけない気がした。  携帯の電源を切り忘れていた、と、廊下を歩きながら携帯を取り出したシンは、その画面に表示された『あと152日』の文字を見ながら電源を落とす操作をする。そして、携帯をポケットに入れて顔を上げれば、ちょうど702号室についていた。扉の横にあるプレートに書かれた名前。  …………南雲…………ハルカ…………  見覚えのある名前と、先ほど目にした152日の文字が脳内で重なる。あのカウントを見るたびに心に広がっていたもやが、すっと晴れていったような気がした。  …………あぁ、そうだ。彼女との約束があったから、俺は二十歳までの日数をカウントしていたんだ…………  カウントを見ながら何度悩んでもわからなかったのが嘘のように、シンは昔かわした小さな約束を思い出していた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加