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一年間こっそり見つめ続けた人に、こんな強烈なフラれ方をした女子は、世界広しと言えども、あたしくらいなもんじゃないだろうか。
「おい! 仙条!」
「え?」
あたしが高校の廊下を、理科の教科書、ノート、筆記用具を両手で胸に抱き、友だちの滝沼真津美(たきぬままつみ)――真津美――と、金井郁子(かないいくこ)――郁――と歩いていた時のことだ。
次の授業の理科が実験で、あたしたちは理科室に移動中だ。
三人でわいわいと、昨日のテレビの話で盛り上がっていた。
あたりの空気を震わすような昂ぶった声で呼ばれた自分の名前に、あたしはおもわず振り向いた。
一澤くん……。
一澤稜(いちさわりょう)くん。
心臓がどきんと跳ねる。
入学当初から、なんとなく気になっていた男子だ。
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