1.恋に落ちた!

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二人の視線が、暗に大丈夫? とさぐるようにあたしの瞳を覗き込む。  あたしは小さく首を縦に振る。  なんだろう。 一澤くんがあたしに用事だなんて。 高校一年も終わりに近づくと、一部の華やかな生徒は、山の頂(いただき)のようにどこにいても目に付く存在になる。 気になる、というひいき目をさしひいても、一澤くんはそういう生徒の一人であることは間違いない。  授業の直前で、廊下にすでに人はいなかった。 生徒がひけて、先生が来るまでのほんの短い静寂の中、一澤くんはあたしを、階段わきの四角く引っ込んだスペースに誘(いざな)った。  校舎のほとんど先端で、ここは廊下からは完全に死角になる。 「お前、何様のつもりだよ!」
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