怖いもんや

4/8
前へ
/169ページ
次へ
漆黒に塗られた玄関?とは裏腹に、まるで寿司屋?のような明るい、それでいて暖かい木の明るさが店内のベースである。 木目の風合いは残しながら、漆なのかニスなのかコーティングをしっかりしてあり、カウンター台上は明るく、壁や足元はまた、入り口と同じ漆黒の黒である。 所々点々と小さなライトが付いているので黒基調だが、ちょうど良い暗さ。といった感じだ。 壁にはものを飾る窪みがあり、真っ白なライトが照らされている。 その光の中心には、小さな人の形をした重厚な金属製のフィギュアが置いてあり、異様な光を放っていてよく見えない。 ふう、昼間にこんなとこ、来たことないぜ?ノブはやや焦りながら琴音をチラ見し、先陣を切る。 ノブ「マスター!焼酎水割り!あと、それにあったツマミをお任せで!」 ノブはあまり飲めない。 今日は飲めないのにスパークリングワインを少し飲んだせいか、テンションがあがり、普段とは違う自分で何もかもが楽しかった。 たまにゃこんなんもいいんじゃねーの? とも思った。 すると、店の店員?マスター?から思いもよらぬ言葉が大きな声で発せられた。 マスター?「おいおいお客さん!ここには酒はないし…それと…まだ説明してないぜ?いい?いい?説明して。いい?」 昭和の時代であればモテてたのにな。ノブはマスターの髪型と顔を評価すると、聞くよ?の表情で迎え撃った。 マスター「お客さん!まず、メニューを見てくれ!そしたら説明に入る!」. 二人は、クルッと斜めに首をひねり、壁に筆で書かれた文字を見てハッとした顔をする。 揃えてこう言う。 「これだけ!?」 壁に書かれた文字。 「怖いもん。」 大きく筆で殴られたそれは、拒否することなど出来ない何かを感じる。 マスターが、目を見開きながら、繰り返し二人を交互に見ながら言う。 「見た?見た?見た?見た?じゃあ説明する!ここはぁ!怖いもん屋!だからぁ! 怖いもんがぁ!めにゅう!」 は、はぁ…。 二人は一斉に引く。何をってその対応、そしてこの店の不思議さに引く。 若者の自由を歌ったかのように激しく訴えかけられたそれは、単純且つ奥深いものを感じる。
/169ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加