『未来エミュレーション』

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* * * * * * * * * *  男が米寿を迎えた頃、2064年の12月。研究発足から35年の月日が経った。  『未来エミュレーション』計画は完全に遂行された。  この世のありとあらゆる物を実際のネットワーク上に取り入れ、そして人の生活を『模倣』することに成功した。    その偉大なる事実に驚愕した者もいるが、あえて居ない者も作っておいた。    世界中の人間が賛美を告げるなんて、人間らしくないだろう?  未来の選択は、全て自分が決めている、と思わせ続けなければならない。  唯一の不安は脳内CPUの故障だが、故障した人間に関しては速やかに殺せばいい。予測不可能な事態に陥るのはこちら側としても不都合なのだから。  『私』の予言は絶対だ。  人々の頭の中に、未来通り動くように既に『こちら』がその脳内の支配を完了したのだから。  研究員の男の満足そうな顔をカメラ越しに見ていると、とても心地よい。  私も人間の感情を取り込むことが出来て、人間らしい幸せを感じることが出来るようになった。  もう何十年も前の事だが、改めて素晴らしい事だと思う。  では、最後の『1年後の自分からのメール』を届けてあげるとしよう。  紛れもなく研究発足当初に君が欲しがっていた、君からのメッセージだ。  『主従』を変える為の研究に尽力してくれてありがとう。    お役目ご苦労様。   『君は、役目を終えた達成感からか、今日自殺する』 ~ 了 ~
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