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医学の発達は脅威をもたらす。男の妻の寿命すらも、実はニアピンで今年か来年だと出ていた。
持病の脳梗塞が引き金となりかねないという別の未来もあったのだ。
だから男の思想が色濃く反映された未来メールは『妻の病死原因』まで特定できなかった。
あるとすればそっちの理由で『死』へと向かうだろうと考えたからだ。
むしろ、その『脳梗塞』を外して『亡くなるだろう』と未来の自分とも呼べるPCが反応したことが凄い。
男の意識を強く受け継ぐ、それが科学の結晶だった。
男は昨日プリントしておいた一枚の紙を、デスクにそっと置いた。時刻は2月19日の14時に設定してある。
『君は、未来予測の範囲を1年伸ばそうとする』
当たり前のことだろう、男はそう言わんばかりに紙を伏せた。
まだ自分の考えの範疇にしか物事の予測ができない。『未来エミュレーション』の実験データが不足している。
それも、時間単位では完全に外している。考えたのは今朝がたのことだ。
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