『未来エミュレーション』

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* * * * * * * * * *  遂に不可思議なことが起こり始めたのは、初代『未来メール』が届いていてから3年の月日が経った頃だ。  男が『何月何日』に何をするのかはっきりとメールから送られてくるようになった。  しかも、その一つ一つが実に面白い。 『君は、モニターの前で新商品のコーヒーを飲む』 『君は、届いたボーナスの少なさにイライラして友人に電話を入れる』 『君は、失われつつある研究心を隠し切れなくなってくる』 『君は、3年ぶりに訪れた研究員に簡素なインスタントカレーを作って出す』  直近3日間の行動を予言しているのは1か月も前のこと。  男の日課は、自分の行動が終わってから3か月前に発行したメールを見ることに切り替わっていた。  改めて未来エミュレーションの精密さに驚かされる。  そして遂に、対象者が他人となる実験も行われた。  被験者はプロジェクト研究員とその家族。  男は毎日未来メールを読み、そして被験者達の行動とすり合わせる。  そうしてまた3年の月日が経った。
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