方向音痴

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僕小川誠はうっかり勉強に夢中になり、アメリカで飛び級で大学まで卒業してしまった。 日本に帰るか研究を続けるか悩んでいたら、兄さんが勉強より友達を作るのが先だと言われて、兄さんの勧め通りに全寮制の男子高に通う事になった。 兄さんは作家と株を投資して資産を増やしている。 兄さんは売れっ子作家で趣味でBL文庫というものを書いている。そのネタを提供する為に全寮制を選んだらしい。 一応内容を読んだけど、恋愛経験が無い僕としてはよく意味が分からなかった。 王道はなんとなく分かったけど、男同士で恋愛とか親衛隊とかチワワちゃんとか本当にいるんだろうか? でも1人でもいいから、友達出来るといいなぁ! 兄さんも兄さんの友達も過保護で、ずっと守られていた。アメリカでも兄さんの本の関係の人が送迎してくれていたから、孤独とか感じないで友達がいなくても平気だったんだ。これからは一人。 後兄さんの萌を提供しないと。 後泣き虫の癖を無くさないと。 新しい制服に身を包み、鏡の中の自分を見る。 目は大きい垂れ目。後はなんの特徴もない平凡な顔。 身長は167センチ高くは無いけど、そんなに低くない。これでは可愛いチワワちゃんになる事も出来ない。 美少年でもないし、イケメンでも無い。 色素の薄い焦げ茶のストレートの髪を摘む。 愛想だけでも良くしないとな。 入学式と書かれた門の前に立つ。 意思の強そうな切れ長の目で、優しく微笑みながら兄さん事小川慎二の目線が柔らかく僕を包む。 カメラで僕の姿を納めていく。兄さんの親友の田中秀樹さんは手を振りながらニコニコ笑っている。野性味溢れる男の色気がある人だ。 「誠君変な人には付いていったらダメだよ。慎二の趣味は妄想だからいいけど、現実にあったらこれを使いなさい」 普通にスタンガンを渡す、秀樹さんに焦りながらスタンガンを返す。 「大丈夫です。平凡なので、そんな心配いりません」 「そうは言うけど、可愛い弟的存在が慎二のバカな萌の為に誠君が犠牲になるのが、納得出来ない」 兄さんが苦笑しながら、間に入ってくる。 「そんなにゲイなんていないさ。それに男子高の方が友達作りやすいだろ?心配するな。俺たちはもう帰らないといけないから、迷わないように人についていくんだぞ。
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