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「山寺から一週間前に郵便物が届いて、中身を確認したらあれが出てきました。山寺とはその4日前に連絡をとったっきり、音信不通で‥‥。その頃あいつはカナダにいたと思います。」
フムフム。と麗は林山の言葉を聞きながら、黒い手帳にそれを書き込んで行く。
「なんて連絡をとってたんです?」
京も手帳を取り出し、記録する準備をする。
「電話がかかってきて、【とにかくこっちは寒い!日本は?】って。」
普通の会話だ。特に変わったところは無い。分かったのは、林山とこの山寺がかなり仲がいいという事だけだった。
「それが、最後の会話‥‥」
「あ、そういえば、郵便物が届いた3日後に山寺から携帯に着信があったような‥‥」
「本当ですか!?」
最後ではなかった。しかも、郵便物が届いた後の連絡。なによりも、その内容の方が重要な気がした。
「けど、何も言ってなかったんですよね。携帯がなって出たら無言で、しばらくして切れました。」
無言の電話。
麗は腕を組み、その意味を考える。そして、考えられる最悪な答えを導き出した。
「‥‥その人、もしかしたらもう‥死んでいるのではないでしょうか。貴方に郵便物を送った時には既に。」
静寂に包まれる病室。
時計の針の音だけがやけに大きく聞こえる。
「え、そんな事って‥」
「ありえますね。この業界ではあり得る事です。だとしたら、その着信を特殊な機械で解析したら、メッセージが聞けるかもしれません。」
京も頷きながら、麗の言葉に同意する。
「そう。ただ、メッセージが良い物かどうかは分かりません。最悪、貴方の命が危ういものかも‥‥。私は今からそれを調べに行きます。京はここにいて、林山さんの護衛を。なんかあったら連絡ちょうだい。林山さん、ご安心を。そいつは、結界と式神の使い手です。何かあったら守ってくれます。」
「了解です。」
麗はそう伝えると立ち上がり、小さく礼をしてから出口に向かった。
「‥‥山寺は、大丈夫なんですかね‥‥。死んでなんか、いないですよね‥‥?」
小さく、震えるように呟く林山の声に、麗は 一瞬、足を止める。気持ちは痛い程にわかる。だが‥‥
「まだ何とも。ただ‥‥最悪な結末になってしまった場合の覚悟はしておいた方がいいでしょう。」
では、と言い、今度こそ麗は病室から出て行った。
その後ろ姿を、京は静かに見つめていた。
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