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「麗さん。あの写真、なんか胡散臭いですよね。まるで麗さんみたいです。」
ここは、東京のとある事務所の中。
ビルの3階にヒッソリと存在する古びた部屋の中に、二人の人間がいた。
1人は、黒い短髪に黒いスーツといった、全身黒づくめの目つきがするどい青年。もう1人は、青年とは正反対の、腰まである、ゆるく巻かれた白髪に、黒いスーツに身を包んだ、紅い瞳が印象的な女性。
茶色の高級そうなソファに腰掛け、ノートパソコンをいじっていた青年が、テレビに映った心霊写真特集を見ながら、目の前にいた女性に語りかける。
麗と呼ばれた女性‥‥黒波 麗(くろなみ れい)は、これまた高級そうなソファに腰掛け、テレビには目を向けず、手元にある雑誌を眺めていた。
「テレビに出る心霊写真なんかは、大抵作り物だろー?つーか、胡散臭いってなに。こんな純粋な子なかなかいないよ?麗さんに謝りたまえ、京。」
(胡散臭い)のレッテルを貼られた麗は少しふて腐れながら、京ーー狗井 京(いぬい けい)を睨みつける。そんな麗に苦笑しながら、京はポケットの中から何かを取り出して麗に投げ渡した。
麗は投げられた物を片手でキャッチし、手のひらに握られたそれを見、顔をしかめる。
「こら、京。麗さんは【人間の食べ物】は食えないって知ってんでしょーが!キャラメルはあんたが食べなさい。」
「いや、それ貰ったんすけど、俺甘いの無理なんすよね。麗さんにあげます。」
「わざとだよね。絶対わざとだよね。だって毎回だもの。」
「いや、人の絶望顔ってそそられません?それが見たくて。」
「どS!!」
好意に見せかけた悪意を隠そうともせず、キャラメルを押し付けてくる京の手を振り払う麗。
この二人、上下関係があり、実は京が部下であり、麗が京の上司なのである。
‥‥今のところ、逆にしか見えないのだが。
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