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そんな男を見、険しい顔つきをする麗と京。
一瞬にして空気が変わった二人を見、圭吾はおずおずと尋ねる。
「‥‥もしかして、なんか、【視えました】?」
二人は、いわゆる【視える人】。それを知っている圭吾は、二人のただならぬ様子に冷や汗を流す。
「‥‥その魚なんですけど。」
麗がゆっくりと言葉を紡ぐ。
「やばいですね。彼の後ろ‥‥黒い人影がまとわりついています。その魚‥‥パズル‥‥わたしの予想が正しければ、それを完成させたらいけない。」
「え‥‥それはなんなんですか?」
麗の言っている事が分からず、聞き返す圭吾だが、それどころではなくなったらしい。
「話せば長いですので、後で。京、彼を全力で羽交い締めにしろ。かなり暴れるぞ。」
「いつも麗さんにやってるみたいにですか?」
「あーうん!そんな感じ!手加減するなよ。」
「了解です」
そう言った後すぐに、京は男を羽交い締めにして抑え込む。その時点では、動きが無かった男であったが、麗が魚を取った瞬間、人が変わったように暴れ出した。
「ギャアァァオォ!!返せぇ!ぞれを返ぜぇ!!ぞれはお前らの為に用意じたんじゃないんだぞぉぉ!!」
物凄い剣幕で、口から唾を吐き出しながら、滅茶苦茶に身体を動かす男を、京がしっかりと抑え込む。その光景はまるで、映画の【エクソシスト】のようであった。
その男の目の前に麗は立ち、その目をじっと見つめる。
「貴方は誰ですか?」
「うるぜぇぇあ!てめーに関係ねぇだろうがぁ!!」
麗の質問を無視し、ひたすらに暴れ続ける男、いや、【何か】。
その剣幕に負けず、再度質問をする。
「何故その男に憑いているのですか」
「お前らが邪魔しなければ、今頃こいつはこっち側だったのによぉ、消えろッ消えろ消えろ消えろぉ!」
やはり質問に答えず、訳のわからない事を喚き散らす【何か】に、悠長に質問する事が無駄だと思ったのか、麗は一度身を引き、次の瞬間、渾身の力を込めて自身の足を男の股の間の壁に蹴りつけた。
【ドゴンッ!!】という破戒音と共に、大穴を開ける壁。パラパラと落ちていく壁の屑。
あまりの剣幕に、男どころか、圭吾と京も息を呑み黙り込む。
途端、静寂が訪れる部屋。その空間を、麗が支配していた。
「‥‥おい、いい加減、質問に答えろや。お前が誰でなんで憑いてんのかって聞いてんの」
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