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低くドスの効いた声で【何か】を脅す麗。
同時に、その紅い瞳が一層輝き出し、麗から耐えられない程の圧がにじみ出る。
その圧に耐えられず、男はすっかり声も出ない程に萎縮していた。
「もう一度、問う。お前は誰で、目的はなんだ?」
急いで視線を外そうとする男だが、麗の紅い瞳がそれを逃さない。捕まったら最後、逃げられない。
逃げられず、力でも叶わないと知った男は、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
《ワタシハ‥‥オレハ‥‥ボクハ‥‥》
1人の男から複数の男女の声。どうやら、1人ではなかったらしい。早くしないと、男の体の方が持たない。
麗はさらに質問する。
「目的は?」
《‥‥ワカラナイ‥‥キヅイタラ‥‥コノハコ二‥‥ヒキヅラレテ‥‥アイッガ、ハコヲ持ッテキタトキカラ‥‥》
「あいつ?」
「山寺ッテ‥‥言ッテタ‥‥」
目的は霊自身も分からないらしかった。
おそらく霊達は、この箱の持つ力に引きづられてきただけだ。この箱の正体が【あれ】ならば、仕方のない事だろう。
麗は、静かに足を引いた。
「‥‥そうか‥‥。お前達をもう生き返らせる事は出来ないが、せめて、安らかに眠れ。京、結界を。私ごとこいつらを閉じ込めてくれ。」
「了解しました。」
京は頷くと、小さく、なにやら呪文のようなものを唱えながら、懐から数枚の長方形の札を取り出し、印を切りながら、札を麗と男の周りを囲うように投げた。
「おんきりきり ばさら ばさり ぶりつまんだまんだ うんぱった」
【キュイン!】
その呪文を唱え終えたと同時に、札と札を通して、巨大な円形の結界が張られた。真言での強力な結界である。
「うわぁ‥‥、いつ見ても凄いな」
その横で、圭吾は感嘆の声を上げていた。
結界が張り終えられたのを確認後、麗は目を閉じて静かに息を吸い込む。次の瞬間、カッと瞳を見開き、「破っ!」と短く喝を入れ、男の首の後ろに手刀を振りかざした。
それを合図にしたかのように、男の中から10数体の黒い影が勢いよく飛び出し、《アァアアアァアアァァ!》と身震いするような雄叫びをあげながら一斉に麗に襲いかかる。
だが、それらは彼女の体を八つ裂きにする事なく、麗の手前で全てサラサラと空気に溶けて無くなってしまった。
まるで、世界の一部になるように、静かに‥‥‥
除霊、完了
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