君を追い掛けて

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灯りが燃え盛る、暖かな火を瞳に映す彼女の横顔は何処か淋しげだった。扉も無い神殿の深層部に向かって歩く、沈黙が続いたままに私達は長い螺旋階段を下っている。 廃病院の様に、質素なベッドや使い古しの掛け布団等が雑に床に散らばっていた。暫く使われていた形跡も無く、時間が止まっているようにも感じた。 壁は、古びて塗装の落ちかけた壁紙が剥き出しに構造等に使用される内面の木板が見えていた。 清潔感何て微量にも思わせない、少々恐怖を連想とさせる神殿内に涼夏は身震いしながら確りと少女に着いて行く。広さは、学校の体育館程はあり大人数でも有り余る位は入れそうだ。 (あ、名前訊いて無い……) 「涼夏、此所は興味深いね。ってそれどころじゃないか……」 ふざけた態度、しかし恐怖を紛らわしたいが為に十夜はそんな風に悪戯っぽく言う。もしこれが罠だったら、少女を逆に掴まえる。 私は後々になり考えた、だが彼女は怪しさを思わせない素振りで至って真面目そうに奥へと進む。 雪の様な髪が、少女が歩く度に靡きその後ろ姿はとても美しかった。まるで天使みたいに純白の服装は、明らかに現実離れをしている。 だからなのか、つい油断していた。涼夏はハッとして我に返るも、気付くと其所は道の途切れた崖際。視ると少女が笑みを浮かべ、少年に手を差し伸べ出す。 彼女は天使何かでは無い、その表情は非道に満ちた悪の素性だった。咄嗟に引き戻す、そして十夜の頬を強くつねる。 「駄目!」 「っ、あれ。僕は何を?」 目覚めた直後、少年はひきつった顔をして苦笑を浮かべながら足元に視線を落とす。途端に蒼白とし、悲鳴じみた叫びを上げた。 白き少女は、無表情になりながら真上をフワリと浮遊して小さく舌打ちをすると再び姿を消して行く。 その時、漸く状況を察して少年が固唾を飲み。危ない、と小さく声を漏らす。同時に足がすくみ、立つ事すらもままならなくなった彼。 海都の死体を下ろし、何度か面食らった表情を浮かべた後に手を地面に着けて震え出す。 無理も無い、急に崖に迄誘導されていたのだから。流石に泣き出す十夜を、そっと背中を擦る涼夏。とりあえず安堵するも、二人は直ぐ様に立ち上がる。 響の身が危ない、瞬時に判断してか少年は素早く手を取り駆け出す。 「此所は危険だよ、他を探そう」 「うん」 (響、待っててね。私達が必ず助けるから……)
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