君を追い掛けて

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流綺(リュウキ)にも良い所がある、私はそう思いながら嬉々として心が浮かれていた。特別入場券を両手に確りと握り、笑顔のままにスカートのポケットからスマホを取り出す。 アドレス帳から、友人の名前を順番にスライドさせ。メール画面にと切り替えて、手早く一番仲の良いメンバーに連絡を打つ。 ――ピロリンッ 勉強机の椅子に腰掛け、読書をしていた時。少年は目の前で鳴る其れに気付き、慣れた手付きでメールを観る。 同じクラスであり、親友の彼女からだった。涼夏からメールが来るのも珍しくも無く、中学ではしょっちゅう話す位だ。 数人で集まり、よく放課後何かには遊びに行く。恐らく残りのあいつらにも送っているなに違い無いと、響は思いながら一旦観るのを中断した。 「少し待ってみるか……」 ――その頃 涼夏はスマホを片手に、隣に立つ兄に苦笑を浮かべて自室を後にする。一人残された流綺は慌てる様に部屋を出て、リビングへと駆けて行く。 しかし、此が後にあんな事態を招く事になる何てこの時はまだ知るよしも無い。 ――日は経ち、早朝になった頃に私は起床して券を鞄にしまい。いそいそと身支度を始めて部屋を出る、扉の真下には自分より少し早目に大学へと向かった兄から手紙が置いてあった。 案外、ぐっすり眠れた。 今から旅行、其れが人類初の潜水型船でと言うのは本当にこの上無く嬉しく名誉な事だ。これも兄のお陰、多少は見直しても良いと初めて思う。 目指すは江ノ島、そこにはあのテレビに出ていた操縦士の女性が待っている。 朝食を早めに取り、母が焼いてくれたトーストをかじり。入れたての珈琲を飲む、優雅とも言える時間にスマホから電話が鳴った。 『涼夏(リョウカ)昨日ぶり、メール観たから。今から駅で待ち合わせするか?』 『うん、丁度朝食を食べ終える所だから。家を出る所だよ、後は皆は現地集合だって』 間も無くし、通話を終わらせてから涼夏はトーストを食べ終える。珈琲を香りを味わいながら飲みきり、椅子の横に置いていたハンドバッグを片手に玄関に向かう。 靴を、お気に入りのピンクのスニーカーを履いて家を出て。母に見送られながら手を振り、駅前へと駆け足で急ぐ。 「じゃあ、お母さん。行って来ます!」 「気を付けてね、流綺も優しい所があって良かったわねぇ。行ってらっしゃい!」 母が手を振り、涼夏は一度だけ振り返り手を振りながら駆ける。
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