君を追い掛けて

8/20
前へ
/385ページ
次へ
空を見上げると、ニャアニャアとうみねこが鳴いている。混じって鳶は高い声でピィーヒョロと、鶯笛の如く鳴いては時折地上の人々の餌となるご飯を狙う。上空から急降下された、誰しもがその姿に驚愕するであろう。 小波(さざなみ)がゆっくりとした低音で、静かに流れて行く。水面はキラキラと太陽の光を反射し、向こう岸に見えた船着き場には何席もの船が近くに見えた。 時々だが、稀に鯨が沖の方に見られる事で有名。そして島の名の由来は、海の幾つかの海洋生物から付けられ。因みに近くには公園があり、この辺り一帯はリゾートの様な構造物が多く建ち並んでいる。 森林公園があり、当初の名前は外国からの由来だったらしく古くからの観光地でもあった。 暫し無言のままに歩き、漸く船着き場まで来ると涼夏は早足に潜水型船の目の前に立つ女性に声をかけ。手を振って、挨拶をし出す。 後ろに括られた茶色の髪は、彼女が彼等に振り向いたと同時にフワリと優しく風に靡く。一見すれば、まるで栗鼠の様なクリッとしたアーモンド型の瞳。 服装は、操縦士用の上下紺色の長袖シャツにズボン。銀色の牡丹が五つ程付いていて、頭を包み込むのは同色の帽子。 (うわぁ、テレビで視た時よりももっと綺麗……) 「では、船長。宜しくっ!」 『当船をご利用頂き、誠にありがとうございます。では皆さん船内にお乗り下さい』 少年は、げんきんにも程がある位に操縦士の女性船長に軽々とした口徴で話す。其を、さらりと受け流す様に彼女はにこやかに乗り込む様にと促してきた。 開けた入り口、其所から見えた船内はあまりにも近未来的な雰囲気を思わす。入り込み分かったが、液晶テレビが一台あるだけ。後は何処からかクーラーから冷風が吹き、中はかなり心地が良い。 しかし何故涼しいのか、私は首を傾げていると潜水型船は扉が閉まり。徐々に動き出して行く、次第に視界に海水が流れ込み思わず眼を疑う。 波を揺らし、押し寄せる海水に半ば恐怖に怯える。だが彼女は至って冷静にテレビにDVDをセットし、リモコンで電源を入れ出す。 画面に映ったのは、一年前にやっていた映画で。それよりもこの状況が気になってしまい、集中何て出来る筈も無く涼夏は肩を震わせる。 (もうっ、何なの。この船は本当に大丈夫なのかな……?) 「ちょっと、あのさ。これ大丈夫な訳?」 流石の海都も、不安の色を隠せず焦り気味に彼女に訊ねた。
/385ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加